全人類の消費するカロリーのうち、30%はいわゆる肉類(牛肉、豚肉、鶏肉など)で消費されるという。FAO(食糧農業機関)によると、家畜業が排出する温室効果ガスは、世界の全排出量の18%にも上るのだそう。
ビジネス面から見ると、畜産、食肉産業は約200兆円($1.8T)の巨大産業です。海外ではHormel, Tyson、ブラジルのJBSらを筆頭に買収が盛んな産業で、多くのM&Aの結果、寡占化が進んでいます。
しかしながら、環境問題、倫理問題、サステイナブルなビジネスという観点からこれらの巨大企業たちは、さまざな課題に直面しています。
一方で、家畜を使わずに植物や他の代替物を使って”肉”を開発するスタートアップが出てきています。
もっとも有名なものは2019年にIPOをしたBeyond Meatという会社でしょう。
またIPOからほどなくしてバーガーキングはImpossible Whopperを発売しました。これはシリコンバレーのベンチャーのImpossible Foodsが開発した植物性の肉をつかったバーガーです。Impossible Foodsは、そのバリュエーションが2000億円を超えるユニコーンです。
その動きは肉だけでなく、スナックにも広がりつつあります。100%植物性のジャーキーなどを開発しているAkuaなどの会社もあります。
最近では、植物だけではなく、昆虫を使う方法を模索している会社もあります。サンフランシスコのBitty Foodsや、Aspire Food Groupに買収されたExoや、All Things Bugsなどの会社などの会社は昆虫を使って、プロテインをとれる食品を開発しています。
ここシリコンバレーでは、レストランにはベジタリアンのメニューがあるのは当然で、昔は肉を食べまくっていたが、環境問題や健康の観点から、乳製品や魚製品も食べないビーガンに転換する人もそれなりに見かけます。
日本は一般にベジタリアンが少ない国と言われていますが、興味深い取り組みもあります。
植物や昆虫ではなく、細胞培養肉を使って、食肉を生産するという試みが、日本であります。羽生雄毅(はにゅう・ゆうき)さんが率いており、ボランティアもいれた研究者たちが細胞農業に関する研究開発を進める「Shojinmeat(ショウジンミート)」プロジェクト及び、細胞農業の技術化、産業化を目指すインテグリカルチャー社です。
ただし、市場が確立していくためには、世の中から受け入れられる必要があります。
コオロギベースのプロテインバーを発売していた、Chapulが2019年に事業から撤退しように、一般消費者から受け入れなければビジネスとして成り立たないのです。
またコストの問題もあります。培養肉であれ、植物性であれ、長年をかけて最適化された畜産産業のコストレベルには10倍以上の差があると言われています。
しかしながら、ホテル業界に挑むAirBnB, タクシー業界を変革するUberにみられるように、いわゆる「ミートテック」は、”テクノロジーを使って既存業界をDisruptする”というシリコンバレーの得意のパターンにはまるのは事実です。
当然、それに目を付けて多くの資金が流れ込んでいます。例えば、
バークレー発で培養肉開発を進めるMemphis Meatsの投資家にはビルゲイツや、食肉大手のTyson New Venturesなどが名を連ねます。
ロス発のSoylentにも、Adreessen HorowitzやGoogle Venturesなどが投資をしています。
Beyond Meetの華々しいIPOはそれらの投資家をさらにBullishにさせていくことになりそうです。
Comments